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ゴルフの健康効果を科学的に|60代・70代の体力維持・認知機能・歩数データ

朝もやの残るゴルフ場で、手引きカートを引きながらフェアウェイを歩くシニアゴルファー4人の後ろ姿
この記事の目次
  1. ゴルフ1ラウンドは、どれくらいの運動量なのか
  2. 国の運動ガイドと照らし合わせると
  3. 体力維持と血糖・脂質への影響として報告されていること
  4. 認知機能との関係を調べた研究
  5. 「ゴルファーは長生き」という研究と、その読み方
  6. 生きがいと社会参加という、数字に出にくい効果
  7. 健康効果を打ち消さないための注意点と、受診の目安
  8. まとめ:ゴルフの健康効果は「歩き続ける仕組み」にある
    1. 今日のラウンド判定

「ゴルフは体にいい」とよく言われますが、実際はどうなのでしょうか。結論から言うと、歩いてまわる18ホールは、国が高齢者に推奨する1日の歩数を1回で上回る「中強度の有酸素運動」に相当すると報告されています。認知機能や生きがい、長生きとの関連を示唆する研究もあります。ただし多くは「可能性がある」という段階で、ゴルフだけで健康が保証されるわけではありません。公的資料と査読論文で確認できたデータだけを使い、60代・70代が知っておきたい健康効果と、その限界を整理します。

ゴルフ1ラウンドは、どれくらいの運動量なのか

ゴルフと健康の関係を最も広く調べたのが、2017年に英国スポーツ医学誌に載ったマレーらのスコーピングレビュー(既存研究を網羅的に整理した論文)です。24か国・301本の研究をもとに、ゴルフの運動強度は平均4.5METs(メッツ=安静時の何倍のエネルギーを使うかの単位)で、「中強度の有酸素運動」に分類されるとまとめられています。

歩いて18ホールをまわった場合の歩数は11,245〜16,667歩、距離は約4〜8マイル(約6.4〜12.9km)、消費エネルギーは531〜2,467kcalと報告されています。一方、乗用カートを使った場合は約6,280歩とされ、歩くか乗るかで運動量は大きく変わります。

高齢者の実測研究もあります。フィンランドのケッティネンらは2023年、平均年齢68〜69歳の健康なゴルファー25名を対象に、全長4,477m(前方ティー)の平坦なコースを手引きカートで18ホール歩いた場合と、6kmのウォーキング、6kmのノルディックウォーキングを比較しました。距離・歩数・運動時間はいずれもゴルフが有意に多く、一方で平均心拍数は最大心拍数の61%(ウォーキングは76%)と低めでした。ゴルフは「強度は控えめだが、長い時間・長い距離を動き続ける運動」だといえます。

国の運動ガイドと照らし合わせると

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に「歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上)」と、有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動などを組み合わせた「多要素な運動を週3日以上」が推奨されています。成人は「1日60分以上(約8,000歩以上)」と「筋力トレーニング週2〜3日」です。

項目運動ガイド2023の推奨(高齢者)歩いて18ホールをまわった場合の報告値
歩数1日約6,000歩以上11,245〜16,667歩(マレーら2017)
身体活動時間1日40分以上数時間(ラウンド時間による)
強度歩行と同等以上平均4.5METs、最大心拍数の約61%(中強度)
多要素運動週3日以上ゴルフ単独では筋トレ・バランスが不足しがち

歩いてまわる1ラウンドは、歩数では推奨量の2倍前後に達します。ただし、ガイドが求めているのは「毎日の積み重ね」と「多要素の運動」で、「座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意する」「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む」とも書かれています。ゴルフを軸に、平日の散歩や筋トレを足す考え方がガイドに沿っています。

体力維持と血糖・脂質への影響として報告されていること

前述のケッティネンらの研究では、運動直後の血液検査も行われています。3種類の運動のいずれでも収縮期血圧(上の血圧)は有意に下がりました。血糖値の変化はゴルフが最も小さく(0.01±1.0mmol/L、ウォーキングは1.3±0.9mmol/L)、HDLコレステロール(いわゆる善玉)はゴルフのみ上昇したと報告されています。研究者らは、時間が長く総消費エネルギーが大きいことが背景にあると考察しています。

ただし留保があります。対象は25名の健康なゴルファーだけで、測定は市販のフィットネス機器によるものです。しかも運動直後の一時的な変化を見たもので、長期的に血糖や脂質が良くなるかを示したものではありません。「1ラウンドで体にこうした反応が起きる」という報告であって、「ゴルフで病気が防げる」という意味ではないのです。

また、ゴルフだけでは筋力やバランスの要素が十分とはいえません。e-ヘルスネット(厚生労働省の健康情報サイト)では、骨格筋量の低下は25〜30歳頃から始まり生涯進行するとされ、予防にはレジスタンス運動(筋力トレーニング)が有用とされています。長く歩き続けるための体づくりは、ゴルフは何歳までできる?80代・90代ゴルファーの共通点と続けるための体づくりでも扱っています。

認知機能との関係を調べた研究

日本で行われたランダム化比較試験(参加者を無作為に2群に分けて比べる、信頼性の高い研究方法)があります。島田らが2018年に英国の疫学誌に発表したもので、65歳以上の日本人106名を、24週間のゴルフ練習プログラム(週1回90〜120分)を行う群と、健康教育を受ける群に分けて比較しました。

その結果、ゴルフ群では「論理的記憶」(物語を聞いて内容を思い出す力)のスコアが対照群より有意に向上したと報告されています。一方、MMSE(認知機能全体を見る検査)、単語記憶、処理速度の検査では2群に差はありませんでした。研究者らは論理的記憶を高める可能性を示しつつ、認知症予防につながるかはさらなる研究が必要だと結論づけています。

もう1つは、前述のケッティネンらが同じ25名を対象に行った研究です。3種類の運動の直後に認知機能検査(トレイルメイキングテスト=数字や文字を順に線で結ぶ検査)を行ったところ、いずれの運動でも注意力や処理速度に関わる成績が改善しました。ただし、計画や切り替えといった「実行機能」の改善はウォーキング系の2種類でのみ有意で、ゴルフでは有意な変化がありませんでした。

  • ゴルフ練習を半年続けた群で、記憶の一部(論理的記憶)が向上したという報告がある(島田ら2018)
  • 1ラウンド直後に注意力・処理速度の検査成績が改善したという報告がある(ケッティネンら2023)
  • 認知機能全体の改善や認知症予防の効果までは示されていない
  • いずれも参加者は健康な高齢者で、人数も限られている

「ゴルファーは長生き」という研究と、その読み方

ゴルフと寿命の関係で最もよく引用されるのが、スウェーデンのカロリンスカ研究所による研究(ファラハマンドら、スカンジナビア・スポーツ医科学誌)です。約30万人のスウェーデン人ゴルファーを、性別・年齢・社会経済的条件をそろえた集団と比べたところ、ゴルファーの死亡率は約40%低く、寿命でおよそ5年の差に相当するとされました。ハンディキャップが低いゴルファーほど死亡率が低かったことも報告されています。

ただし、研究者自身が「プレー以外の要因、たとえば全般的に健康的な生活習慣が背景にある可能性は排除できない」と明記しています。これは観察研究で、ゴルフを始めたから長生きになったという因果関係を証明したものではなく、もともと健康で活動的な人がゴルフを続けやすい、という逆の関係も含まれている可能性があります。「ゴルフをすれば5年長生きできる」ではなく、「長くゴルフを続けられている人には、健康面で良い傾向が見られる」と読むのが、研究に忠実な理解です。

生きがいと社会参加という、数字に出にくい効果

内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、何らかの社会活動に参加している高齢者のうち、生きがいを「十分感じている」または「多少感じている」と答えた人は84.4%で、いずれの活動にも参加しなかった人を22.7ポイント上回っています。同伴者と定期的に顔を合わせ、予定を入れるゴルフの習慣は、白書が示す「社会活動への参加」に近いものです。

マレーらのレビューでも、ゴルフは自尊感情や人とのつながりといった「ウェルネス(心の充実感)」との良い関連が確認されています。ただし、うつ病などの精神疾患への効果は「一貫した証拠はない」とも明記されており、断定は避ける必要があります。60代・70代で体や楽しみ方がどう変わるかは、60代・70代でゴルフは何が変わる?体・スコア・楽しみ方のリアルでまとめています。

健康効果を打ち消さないための注意点と、受診の目安

リスクも見ておきましょう。マレーらのレビューでは、アマチュアゴルファーの年間の負傷率は15.8〜40.9%で、部位別では腰が18.3〜36.4%と最も多くなっています。また、夏場は熱中症のリスクが年齢とともに高まります。詳しくはシニアの夏ゴルフは何が危険か|熱中症リスクが高い理由と年代別の対策で解説しています。

  • 可能なホールは歩く。カートに乗ると歩数が半分程度になるという報告があります
  • 平日に筋力トレーニングやバランス運動を補う(運動ガイドの「多要素運動を週3日以上」)
  • ラウンドのない日も座りっぱなしを避け、散歩で歩数を積み重ねる
  • 痛みを我慢してプレーを続けない。高温多湿の日は無理をしない

受診の目安としては、腰・膝・肘などの痛みが2週間以上続く、安静にしても治まらない、しびれや力が入りにくい感覚を伴う場合は整形外科を受診してください。ラウンド中や直後に胸の痛み・強い息切れ・冷や汗・めまい・ろれつが回らないなどの症状が出た場合は、様子を見ずに周囲に知らせ、救急要請を含めて早急に医療機関へ。

また、高血圧・糖尿病・心疾患などの持病がある方や服薬中の方は、運動量を増やす前に主治医に相談してください。紹介した研究はいずれも「健康な高齢者」を対象にしたもので、持病のある方に同じ結果が当てはまるとは限りません。

まとめ:ゴルフの健康効果は「歩き続ける仕組み」にある

歩いてまわるゴルフは1万歩を超える中強度の有酸素運動で、国の運動ガイドが高齢者に求める1日の歩数を1回で上回ります。認知機能の一部や生きがい、死亡率との関連も報告されていますが、いずれも「示唆されている」段階です。ゴルフの価値は、「次のラウンドがあるから体を整えておこう」と思わせ、歩き続ける仕組みを生活に組み込んでくれることにあります。歩けるホールは歩き、平日に筋力とバランスの運動を補い、体調の変化には早めに対処する。この積み重ねが、100歳までゴルフを続ける土台になります。

この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。痛みや体調不良が続く場合、持病がある場合は、医師など専門家にご相談ください。

参考文献・出典

  1. Murray AD et al. 2017 Br J Sports Med「The relationships between golf and health: a scoping review」
  2. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
  3. Kettinen J et al. 2023 BMJ Open Sport Exerc Med「Comparative effectiveness of playing golf to Nordic walking and walking on acute physiological effects on cardiometabolic markers in healthy older adults」
  4. Kettinen J et al. 2023 BMJ Open Sport Exerc Med「Cognitive and biomarker responses in healthy older adults to a 18-hole golf round and different walking types」
  5. Shimada H et al. 2018 J Epidemiol Community Health「Effects of golf training on cognition in older adults: a randomised controlled trial」
  6. Farahmand B et al. 2009 Scand J Med Sci Sports(カロリンスカ研究所 解説記事 ScienceDaily)
  7. 内閣府「令和6年版高齢社会白書」第1章第2節3