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「ゴルフは何歳までできますか」。この質問には、たいてい二つの気持ちが隠れています。「自分はいつまで続けられるだろう」という不安と、「できるだけ長く続けたい」という願いです。この記事では、公開されている統計と公的機関の運動指針をもとに、ゴルフに「引退年齢」があるのか、80代・90代まで続けている人にはどんな工夫が共通しているのか、そして今から何を準備すれば長く続けられるのかを整理します。結論を先に言えば、ゴルフをやめる時期を決めるのは年齢ではなく、「歩けるか」「体をひねれるか」「暑さ寒さに対応できるか」の3つの条件です。
結論:ゴルフに「引退年齢」はない
笹川スポーツ財団の「スポーツライフ・データ2022」によると、年1回以上ゴルフ(コース・練習場)をする人の割合は、70歳以上で9.5%、男性に限れば17.6%です。これは20歳代(4.5%)の約2倍で、60歳代(10.8%)とほぼ変わりません。つまり、70歳を超えてもゴルフをやめる人は、統計上あまり多くありません。国内のゴルフ人口856万人の中で、シニア層は最も厚い層です。
この調査では「70歳以上」がひとまとめなので、80代・90代の実施率は分かりません。ただ、ゴルフ場で80代のプレーヤーを見かけることは珍しくなく、90代で現役のゴルファーが紙面やテレビで紹介されることもたびたびあります。年齢を理由にゴルフから離れる人は確かにいますが、それは「ゴルフが年齢的に不可能になった」からではなく、歩行や体調、同伴者の事情など、別の要因であることが大半です。
なぜゴルフは高齢でも続けられるのか
ゴルフには、他の多くのスポーツにない「続けやすさ」の条件がそろっています。相手と接触しない。自分のペースで動ける。走らなくてよい。そして、体力に合わせて負荷を調整する手段が、ルールの中に最初から用意されています。
- ティーの位置を選べる。多くのコースには、通常のティーより前方に「シニアティー」や「ゴールドティー」があり、コース全体が数百ヤード短くなります。前のティーを使うのは恥ではなく、コースが用意した正規の選択肢です。
- カートに乗れる。歩くことは健康に良い一方、暑い日や体調に不安がある日はカートを使えば移動の負担を大きく減らせます。フェアウェイにカートで乗り入れできるコースも増えています。
- 9ホールで区切れる。18ホールが体力的に厳しくなったら、ハーフ(9ホール)のプレーに切り替えられます。夏場はとくに有効です。
- 年齢ごとに目標を変えられる。「エージシュート(自分の年齢以下のスコアで18ホールを回ること)」は、年齢が上がるほど達成しやすくなる、シニアゴルフならではの目標です。80歳で80、90歳で90。飛距離が落ちてもスコアの目標は残ります。
80代・90代まで続けている人に共通する5つの工夫
長く続けている高齢ゴルファーの体験談や、シニアを指導するプロの助言で繰り返し語られるのは、才能や体格ではなく、考え方と習慣です。よく挙げられる工夫を5つにまとめます。
- 飛距離を追わない。「若い頃より30ヤード落ちた」ことを嘆かず、短くなった飛距離を前提にコースを組み立て直している人が長く続いています。飛距離に合わせてティーを前に出し、クラブを軽く・やわらかいものに替えるのもこの一環です。
- ラウンドのない週も体を動かしている。週1回の練習場、毎朝の散歩、ラジオ体操。ゴルフのためだけでなく、日常の運動習慣を持っている人ほど、ラウンド後の疲れが軽く、翌日に痛みが残りにくい、というのはよく聞く話です。
- 無理な日は無理をしない。暑い日はハーフにする、体調が悪ければ当日キャンセルする、カートに乗る。「今日は全部歩く」と決めつけず、その日の体と相談する柔らかさが、結果として長く続く理由になっています。
- 一緒に回る仲間を複数持っている。同世代の仲間は、体調やご家族の事情で一人ずつ抜けていきます。ひとつのグループだけに頼らず、練習場の知人、1人予約、地域のサークルなど、ゴルフをする「場」を複数持っている人は、仲間が減っても続けられます。
- かかりつけ医にゴルフをしていると伝えている。持病の薬の飲み方、夏の水分のとり方、運動の強さの目安を、主治医と共有している人が多いのも特徴です。「ゴルフを続けたい」と医師に伝えることで、続けるための具体的な助言がもらえます。
体の側で起きていること:筋肉は放っておくと減る
「何歳まで」を左右する最大の要因は筋肉です。厚生労働省の健康情報サイト(e-ヘルスネット)は、高齢期に骨格筋量と筋力・身体機能が低下する状態を「サルコペニア」と呼び、骨格筋量の低下は「25〜30歳頃から始まり、生涯を通して進行」すると説明しています。ゴルフで言えば、飛距離が落ちる、18ホールの後半で足が重くなる、傾斜で踏ん張れない、といった変化の背景には、この筋肉量の減少があります。
ただし、同じ資料は予防の方向もはっきり示しています。レジスタンス運動(いわゆる筋トレ)が有用であること、体重1kgあたり1日1.0g以上のたんぱく質摂取が発症予防に有効な可能性があること、そして運動と栄養はそれぞれ単独より併用した方が効果的であること、の3点です。
もう一つの土台が、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」です。高齢者への推奨は、「歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上)」と、「有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動など多要素な運動を週3日以上」。ゴルフのラウンドは前者(歩く)に大きく貢献しますが、後者(筋力・バランス・柔軟)は、ゴルフだけでは足りません。ここを日常で補うことが、「何歳までできるか」を延ばす具体策になります。
ゴルフを続けるための体づくり:日常でできる3つ
ジムに通う必要はありません。上の指針に沿って、ゴルフに直結する動きを日常に入れる例を3つ挙げます。いずれも一般的な運動の例であり、持病がある方や痛みのある方は、始める前に主治医に相談してください。
- 下半身:椅子からの立ち座り。椅子に座り、手を使わずに立ち上がって、ゆっくり座る。これを10回×2〜3セット。太ももとお尻の筋肉は、傾斜地でのスイングの土台であり、18ホール歩き切る体力そのものです。
- バランス:かかと上げと片足立ち。台所のカウンターや机に手を添えて、かかとの上げ下げ20回、その後、支えに手を添えたまま片足立ちを左右30秒ずつ。転倒予防は、ゴルフを続けるための最重要項目です。ラウンド中の転倒やバンカーの段差での怪我は、ゴルフをやめるきっかけになりやすいからです。
- 柔軟性:股関節と胸まわりのストレッチ。スイングで使うのは、腰そのものより、股関節と胸(胸郭)の回旋です。椅子に座って上体をゆっくり左右にひねる、あぐらや椅子で股関節を開く。腰だけをひねろうとすると腰痛の原因になるので、「股関節と胸で回す」意識が体を守ります。
加えて、たんぱく質を毎食とること。朝食が「パンとコーヒーだけ」になりがちな方は、卵・納豆・牛乳・ヨーグルトのいずれかを足すだけで、1日の摂取量が大きく変わります。
「やめるべきサイン」を知っておく
長く続けるために、逆に「この状態では無理をしない」という線も知っておいてください。プレー中や運動中に、胸の痛みや圧迫感、強い息切れ、めまい・ふらつき、冷や汗が出た場合は、その場でプレーを中断し、必要なら周りの人や施設のスタッフに助けを求めてください。腰・膝・肩・肘の痛みが数日以上続く場合、痛みで日常動作に支障が出る場合は、整形外科を受診してから再開するのが原則です。これは「やめる」ためではなく、「長く続ける」ための受診です。
そして夏。高齢になるほど暑さを感じにくく、体に熱がこもりやすくなるため、7〜9月のラウンドは若い世代よりリスクが高くなります。早朝スタート、ハーフ、カート、こまめな水分と塩分補給を基本にし、詳しくはシニアの夏ゴルフは何が危険かをお読みください。
ゴルフと寿命:スウェーデンの30万人調査
最後に、励みになるデータをひとつ。スウェーデンのカロリンスカ研究所が約30万人のゴルファーを対象に行った研究(2008年発表)では、ゴルファーの死亡率は、同じ性別・年齢・社会経済的状況の人と比べて約40%低く、これは寿命でおよそ5年の差に相当すると報告されました。また、ハンディキャップが低い(よく練習し、よくプレーしている)グループほど死亡率が低い傾向も見られました。研究者自身が「ゴルフ以外の健康的な生活習慣が背景にある可能性は排除できない」と留保をつけているので、「ゴルフをすれば5年長生きできる」と単純に言うことはできません。それでも、屋外で数時間歩き、仲間と会話し、目標を持って体を動かす習慣が、健康にとって良い方向に働くことは、この規模のデータからも読み取れます。
まとめ:「何歳まで」は自分で延ばせる
ゴルフに引退年齢はありません。70歳以上の実施率は20歳代の約2倍で、ルールの中に体力に合わせる手段(前のティー、カート、ハーフ、エージシュート)がそろっています。「何歳までできるか」を決めるのは、歩ける脚、ひねれる体、暑さ寒さへの対応力の3つで、これらは日常の運動と食事で維持できます。飛距離を追わず、無理な日は無理をせず、仲間の場を複数持ち、主治医にゴルフをしていると伝える。当サイトの名前の通り、100歳までゴルフを続ける人が、これから増えていくはずです。年代ごとの体の変化については60代・70代でゴルフは何が変わる?も参考にしてください。
この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。痛みや体調不良が続く場合、持病がある場合は、医師など専門家にご相談ください。
参考文献・出典
- 笹川スポーツ財団 スポーツライフ・データ2022 ゴルフ人口(年代別実施率)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット サルコペニア
- 厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要)
- Farahmand B. et al. Golf: a game of life and death - reduced mortality in Swedish golf players. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports 2009
- ScienceDaily: Golf Prolongs Life, Swedish Study Finds (Karolinska Institutet, 2008)
