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ゴルフの腰痛|60代・70代に多い原因・予防ストレッチ・腰にやさしいスイング

朝のゴルフ場でクラブを肩に担ぎ、上体をひねるストレッチをするシニア男性の後ろ姿
この記事の目次
  1. ゴルフで腰を痛めやすいのはなぜか
  2. シニアゴルファーが特に気をつけたいこと
  3. 予防の基本はプレー前のウォームアップ
  4. 一般的に紹介されているストレッチの例
    1. お尻・股関節のストレッチ(いすに座って)
    2. 胸まわり(胸郭)の回旋ストレッチ
    3. もも裏(ハムストリングス)のストレッチ
    4. 体幹を安定させる運動(自宅で)
  5. 腰にやさしいスイングと練習の考え方
  6. こんなときは医療機関へ(受診の目安)
  7. まとめ
    1. 今日のラウンド判定

シニアゴルファーの体の悩みで、とくに多いのが「腰」です。結論から言うと、ゴルフで腰に負担がかかりやすいのは、前かがみの姿勢のまま、片側にだけ体を強くひねる動きを繰り返すスポーツだからです。予防の基本は、プレー前のウォームアップ、股関節と胸まわりの柔らかさを保つこと、体幹(胴体の芯)を安定させること、無理なフルスイングと打ちすぎを避けることです。この記事では、日本整形外科学会や厚生労働省の公開資料、ゴルフ傷害の研究をもとに、腰を守りながら続けるための考え方と受診の目安を整理します。

ゴルフで腰を痛めやすいのはなぜか

ゴルフと健康の関係を幅広く調べた研究(Murray ほか、2017年、British Journal of Sports Medicine)では、アマチュアゴルファーの年間の負傷率は15.8〜40.9%と報告されています。部位別で最も多いのが腰で、アマチュアのけが全体の18.3〜36.4%を占めるとされています。ひじ(8.0〜33.0%)、手首・手(10.0〜32%)、肩(4.0〜18.6%)が続きます。同じ研究は、けがの主な要因として「反復練習の量」と「スイング動作の不適切さ」を挙げ、十分なウォームアップと体づくりがリスクを下げるとしています。

なぜ腰なのでしょうか。スイングの生体力学(体の動きと力の関係)をまとめたレビュー(Edwards ほか、2020年)によると、インパクト直後には腰椎の下部(L4-L5)に体重の6.5〜8倍以上の圧迫力がかかると報告されています。ゴルフのスイングは、前傾した姿勢から必ず同じ方向にだけ体を回す動きです。次のような特徴が、腰への負担につながると考えられています。

  • 片側回旋の反復:右打ちなら常に左へ回すため、左右の筋肉や関節の使い方がかたよりやすい
  • 前傾姿勢での回転:上体を倒したまま回すため、腰をひねる力に加えて横に曲げる力(側屈)も加わる
  • 股関節の動きが足りないと腰が代わりに動く:腰痛のあるゴルファーでは、体重を乗せる側(右打ちなら左)の股関節の内側への回転が小さい傾向が報告されています
  • フィニッシュで腰を反りすぎる:体が「逆C字」に反る形は、腰椎に前後方向のずれる力(せん断力)を増やすとされています

シニアゴルファーが特に気をつけたいこと

日本整形外科学会の解説では、腰痛の原因として、加齢にともなう変形性脊椎症(背骨の変形)、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症(背骨の中の神経の通り道が狭くなる状態)などが挙げられています。年齢を重ねると背骨や椎間板そのものが変化していくため、若いころと同じスイングや球数がそのまま腰に受け止められるとは限りません。

また、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、握力、腹筋力、バランス能力などは年齢によって変化するとされ、個人の体力や健康状態に応じた配慮が求められています。「腰痛診療ガイドライン2019」(日本整形外科学会・日本腰痛学会)のまとめでは、日常的に運動している人に比べて、普段運動していない人は腰痛を発症するリスクが高まると述べられています。つまり、シニアにとって大切なのは「腰をかばって動かさない」ことではなく、ゴルフ以外の日でも体を動かし、腰を支える筋肉と股関節の柔らかさを保つことです。

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、高齢者は歩行などを1日40分以上、有酸素運動・筋トレ・バランス・柔軟性を組み合わせた多要素の運動を週3日以上行うことが推奨されています。ラウンドは有酸素運動になりますが、筋トレと柔軟性は意識しないと抜けやすい部分です。80代・90代まで続けている方の体づくりはゴルフは何歳までできる?80代・90代ゴルファーの共通点でも紹介しています。

予防の基本はプレー前のウォームアップ

Murray らの研究は、十分なウォームアップと体づくりがけがのリスクを下げるとしています。Edwards らのレビューでも、クラブを何回か振るだけではなく、体をひねる動きを取り入れたウォームアップが望ましいとされています。早朝スタートで体が冷えているとき、車で長く移動した直後は、特に腰がかたまりやすい場面です。スタート前の10分を、次のような流れに使ってみてください。

  1. まず歩く、軽く足踏みをするなどして体を温める
  2. 股関節、胸まわり、もも裏をゆっくり伸ばす(次の章の例を参考に)
  3. クラブを持たずに、上体をゆっくり左右にひねる動きを数回行う
  4. 短いクラブから、小さい振り幅で素振りを始め、少しずつ大きくする

腰への負担と予防の考え方を表にまとめました。

腰に負担をかけやすい要因予防の考え方
体が冷えたままの1番ホールスタート前に体を温め、ひねる動きを含めたウォームアップ
股関節・胸まわりの動きが小さい股関節と胸郭(胸まわり)のストレッチを習慣にする
体幹(胴体の芯)が安定しないお尻・お腹・背中を支える筋肉のトレーニング
大きすぎるバックスイング、反りすぎたフィニッシュ振り幅を抑え、腰を反らないフィニッシュを意識する
練習場での打ちすぎ球数を決めて、疲れを感じたらやめる
普段まったく運動しないゴルフ以外の日にも歩行や多要素運動を取り入れる

一般的に紹介されているストレッチの例

ゴルファー向けに一般的に紹介されている、股関節・胸まわり・もも裏・体幹に関わる動きを4つ挙げます。いずれも「痛くなく、気持ちよい程度」で行うことが前提です。すでに腰に痛みがある方、持病がある方は、行う前に主治医に相談してください。

お尻・股関節のストレッチ(いすに座って)

いすに座り、片足のくるぶしを反対のひざの上に乗せます。背中を丸めず、胸を軽く前に倒すと、乗せた側のお尻の外側が伸びます。左右それぞれ20秒以上を目安に行います。

胸まわり(胸郭)の回旋ストレッチ

クラブを両手で持って胸の前で横にかまえ、足を肩幅に開いて軽くひざを曲げます。腰から下はできるだけ動かさず、みぞおちから上だけをゆっくり左右にひねります。反動をつけず、左右にゆっくり数回ずつ行います。

もも裏(ハムストリングス)のストレッチ

片足を一歩前に出してかかとを地面につけ、つま先を上げます。背すじを伸ばしたまま、後ろ足のひざを軽く曲げてお尻を後ろに引くと、前足のもも裏が伸びます。前かがみのアドレス姿勢を支えるのはこの部分です。左右20秒以上を目安に行います。

体幹を安定させる運動(自宅で)

Edwards らのレビューでは、お尻・背中・お腹の筋肉を段階的に強くする運動として、ヒップブリッジ(あお向けでお尻を持ち上げる)、プランク(ひじとつま先で体を一直線に支える)、バードドッグ(四つばいで対角の手足を伸ばす)などが挙げられています。回数より、腰を反らさず正しい姿勢を保つことが優先です。

行い方の原則は、厚生労働省の e-ヘルスネットと腰痛予防対策指針で次のように示されています。

  • 1か所につき20秒以上(指針では20〜30秒)ゆっくり伸ばし続ける
  • 反動やはずみをつけない(静的なストレッチ)
  • 痛いほど伸ばすと筋肉がかえってかたくなるため、痛くなく気持ちよい程度にとどめる
  • 呼吸を止めない(息を止めると血圧が上がることがある)
  • 急性期の腰痛や、回復期で痛みが残る場合に行うかどうかは医師と相談する

腰にやさしいスイングと練習の考え方

スイングを変えるのは簡単ではありませんが、腰への負担という観点で手がかりがあります。Edwards らのレビューでは、バックスイングを短くするとフルスイングより背骨への負荷が減り、ヘッドスピードや方向性には有意な変化がなかったという研究が紹介されています。飛距離を犠牲にせず腰の負担を軽くできる可能性がある、心強いデータです。

  • 振り幅を8割にする:肩が回りきらない位置で止め、腰をひねりすぎない
  • フィニッシュで腰を反らない:体を起こして楽に立つ形で終わる。「逆C字」を避ける
  • 体重移動を使って回る:腰を横に曲げて打つのではなく、股関節に体重を乗せ替えて回る
  • 練習の球数を決める:反復練習の量そのものがけがの要因とされているため、疲れてフォームが崩れる前にやめる

クラブの重さも無関係ではありません。重すぎるクラブを力で振ろうとすると、上体だけで振る動きになりがちです。自分に合った重量・シャフトの目安は60代からのゴルフクラブの選び方で、60代・70代の体とスコアの変化はシニアゴルファー入門で解説しています。

こんなときは医療機関へ(受診の目安)

この記事はセルフケアの考え方を紹介するものであり、痛みの原因を自分で判断するためのものではありません。日本整形外科学会の解説では、次のような場合は放置したり自分で管理したりせず、すみやかに整形外科を受診するようにと述べられています。

  • 安静にしていても痛みが軽くならない、しだいに悪化する
  • 発熱している
  • 脚(下肢)がしびれる、力が入らない
  • 尿漏れがする

「腰痛診療ガイドライン2019」でも、時間や活動に関係なく続く痛み、体重減少、がんやステロイド治療の既往、広い範囲の神経症状などが、重い病気が隠れている可能性を示す「危険信号(red flags)」として挙げられています。また、同ガイドラインでは3か月以上続く腰痛を慢性腰痛と定義しています。ラウンド後に数日で落ち着く張りと、何週間も続く痛みは別のものと考え、長引く場合は一度受診してください。転倒など、はっきりしたきっかけのある強い痛みも我慢せずに受診しましょう。骨粗しょう症や糖尿病、心臓の病気など持病がある方は、ストレッチやトレーニングを始める前に主治医に相談してください。

まとめ

ゴルフは、前傾姿勢で片側にひねる動きを繰り返すため、腰がいちばん負担を受けやすい部位とされています。シニアでは背骨の加齢変化も加わるため、若いころの感覚のまま振り続けるのは避けたいところです。予防の柱は、プレー前に体を温めてひねる動きを入れること、股関節と胸まわりの柔らかさを保つこと、体幹を支える筋肉を鍛えること、振り幅と球数を欲張らないことの4つです。そして、脚のしびれや力の入りにくさ、安静でも続く痛み、発熱、排尿の異常があれば、すみやかに医療機関へ。腰と上手につき合うことが、100歳までゴルフを続ける近道です。

この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。痛みや体調不良が続く場合、持病がある場合は、医師など専門家にご相談ください。

参考文献・出典

  1. 日本整形外科学会「腰痛」症状・病気をしらべる
  2. 日本整形外科学会・日本腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)」Mindsガイドラインライブラリ
  3. Murray AD et al. The relationships between golf and health: a scoping review. Br J Sports Med 2017
  4. Edwards N, Dickin C, Wang H. Low back pain and golf: A review of biomechanical risk factors. Sports Med Health Sci 2020
  5. 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレッチングの実際」
  6. 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」
  7. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」