この記事の目次
先に結論です。ゴルフ場で熱中症が疑われたら、「日陰に移す・体を冷やす・自分で飲めるなら水分と塩分をとる」がすぐにできる対処です。呼びかけへの反応がおかしい、自分で水が飲めない、休んでも良くならないときは、ためらわずに救急車を呼ぶことが公的資料で示されています。
この記事は、環境省「熱中症環境保健マニュアル」と総務省消防庁の資料を根拠に、症状の段階、応急処置、救急車を呼ぶ判断、暑さ指数(WBGT)の見方、シニアの予防策を整理したものです。医療行為の指示ではなく、公的資料の考え方をゴルフ場の場面に当てはめてお伝えします。
熱中症の症状は「3つの段階」で見る
総務省消防庁のリーフレットでは、熱中症を症状の重さでI度(軽症)・II度(中等症)・III度(重症)の3段階に分け、それぞれの対処方法を示しています。
| 段階 | 主な症状 | 対処の目安 |
|---|---|---|
| I度(軽症) | めまい、立ちくらみ、こむら返り、手足のしびれ | 涼しい場所へ移動し安静に。冷やした水分と塩分を補給。症状が改善すれば受診は不要とされる |
| II度(中等症) | 頭痛、吐き気・吐いた、体がだるい、集中力や判断力の低下 | 涼しい場所へ移動し安静に。衣類をゆるめて体を冷やし、十分な水分と塩分を補給。改善しなければ受診が必要 |
| III度(重症) | 意識障害、けいれん、運動障害、体が熱い | 急いで救急車を要請。並行して涼しい場所へ移し、衣類をゆるめ、保冷剤などで冷やす |
出典:総務省消防庁「熱中症対策リーフレット」。環境省のマニュアルでは、重症度を見分けるポイントとして「意識がしっかりしているか」「水を自分で飲めるか」「症状が改善したか」の3点が挙げられています。
ゴルフ場で熱中症が起きやすい理由と、シニアのリスク
ゴルフは、真夏の日中に4〜5時間、日差しをさえぎるものが少ない屋外で体を動かし続けるスポーツです。加えて、体調が悪くても同伴者に言い出しにくい事情もあります。そして、シニア世代は年齢そのものがリスク要因です。総務省消防庁の集計では、令和7年(2025年)5月から9月の熱中症による救急搬送人員は全国で100,510人、そのうち65歳以上の高齢者が57,433人で57.1%を占めました。搬送された人の半数以上がシニア世代ということです。環境省のマニュアルは、高齢者が熱中症になりやすい理由として次の点を挙げています。
- 「暑い」と感じにくくなる
- 行動性体温調節(日陰に移る、服を脱ぐといった行動)が鈍る
- 発汗量・皮膚血流量の増加が遅れ、量そのものも減る
- 体内の水分量が減少し、のどの渇きを感じにくくなる
同マニュアルは、高齢者は体液量・血液量が少ないため、同じ量の汗をかいても脱水に陥りやすく、回復しにくいとしています。年代ごとの背景はシニアの夏ゴルフは何が危険かの記事でも整理しています。
同伴者の具合が悪いときの応急処置の手順
環境省のマニュアルと消防庁のリーフレットが示す対応を、ゴルフ場での動きに置き換えると次の順番です。
- 声をかけて意識を確かめる。返事がおかしい、返事がないときは、この時点で119番に通報します。
- 涼しい場所へ移す。風通しのよい日陰、できれば冷房の効いたクラブハウスへ。動けないときはカートで運び、マスター室に応援を頼みます。
- 衣服をゆるめて安静に寝かせる。ベルト、襟元、袖口をゆるめます。
- 体を冷やす。皮膚を濡らしてうちわなどで風を送る、氷やアイスパックで冷やす方法が示されています。冷やす場所は首の周り、脇の下、太もものつけねなど太い血管が皮膚の近くを通る部位が有効とされています。クーラーボックスの氷や濡らしたタオルが役立ちます。
- 自分で飲めるなら水分と塩分をとってもらう。大量に汗をかいた後は、塩分も補える経口補水液やスポーツドリンクが最適とされています。ただし、意識がはっきりしない人に口から飲ませるのは禁物です。
- 自分で飲めない、休んでも良くならないなら医療機関へ。マニュアルは「自力で水分の摂取ができないときは、点滴で補う必要があるので、緊急で医療機関に搬送することが最優先」としています。
マニュアルには「重症者を救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げることができるかにかかっている」とあり、救急車を待つ間も冷やし続けることが大切です。
救急車を呼ぶ判断基準
環境省のマニュアルの対応フローと消防庁のリーフレットによると、次のいずれかに当たれば救急要請が示されています。
- 呼びかけに応えない、返事や反応がおかしい(意識障害)
- けいれんしている、まっすぐ歩けない(運動障害)
- 体を触ると明らかに熱い
- 水分を自分で飲めない
- 涼しい場所で冷やし、水分をとっても症状が良くならない
119番は同伴者の一人がかけ、別の人がマスター室やキャディに連絡して救急隊の誘導を頼むと動きがスムーズです。ゴルフ場の住所と、何番ホールのどのあたりにいるかを伝えられるようにしておきましょう。
暑さ指数(WBGT)と熱中症警戒アラートの見方
環境省が使う暑さ指数(WBGT)は、気温に湿度と日差しの照り返し(輻射熱)を組み合わせた指標で、屋外では「0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度」で計算されます。湿度の影響が大きいため、蒸し暑い曇りの日でも高くなることがあります。マニュアル掲載の「熱中症予防運動指針」をゴルフ場の目安に読み替えると次のようになります。
| 暑さ指数(WBGT) | 運動指針の区分 | ゴルフ場での行動の目安(編集部の読み替え) |
|---|---|---|
| 35以上 | 運動は原則中止 | プレーを見合わせる。キャンセルや日程変更を検討 |
| 31〜35 | 厳重警戒(激しい運動は中止) | ハーフで切り上げる、カートを使う、休憩を増やす。シニアは中止を前向きに検討 |
| 28〜31 | 警戒(積極的に休憩) | ホールごとに水分をとり、日陰で休む回数を増やす |
| 24〜28 | 注意(積極的に水分補給) | のどが渇く前に飲む。塩分も一緒にとる |
| 24未満 | ほぼ安全(適宜水分補給) | 通常どおりプレー。ただし油断はしない |
出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」。休憩は一般に30分に1回以上、警戒の区分では10〜20分おきにとることが示されています。
もう一つの目安が熱中症警戒アラートです。環境省の説明では、府県予報区などのいずれかの地点で、翌日または当日の日最高暑さ指数が33に達すると予測される場合に発表され、都道府県内のすべての地点で翌日の日最高暑さ指数が35に達する場合などには「熱中症特別警戒アラート」が発表されます。消防庁のリーフレットは、警戒アラート発表時は「外出をできるだけ控える」ことを予防のポイントに挙げています。
前日からラウンド中までの予防策
環境省のマニュアルによれば、予防は前日の体調管理から始まります。
- 前日の睡眠と飲酒。普段より1.5時間程度の睡眠不足でも翌日の運動で体温が高くなり、体温調節機能が低下するとされています。また「深酒をして二日酔いの人も脱水状態であり、非常に危険」と明記されています。
- 体調が悪い日はやめる。発熱や下痢があるときは脱水状態にあり、食事や水分が十分とれるまで暑いところでの活動は控えるべきとされています。朝食も抜かないようにします。
- のどが渇く前に、こまめに飲む。高齢者向けのポイントとして「のどがかわかなくても水分補給」が挙げられています。大量に汗をかくときは、塩分濃度0.1〜0.2%程度のスポーツ飲料などが薦められています。
- 服装。ゆったりした吸汗・速乾素材の衣服、日傘や帽子の活用が挙げられています。炎天下では黒色系の素材を避け、帽子は時々はずして汗の蒸発を促すこととされています。
- 早朝スタート・ハーフ・カート。暑さ指数が高くなる日中を避けて早朝にプレーする、午前だけのハーフにする、乗用カートで歩く距離を減らすなど、予約の段階で計画します。
- 暑さに体を慣らす。やや暑い環境で毎日30分程度の運動を続けると、暑熱順化(暑さに体が慣れること)が2週間程度で完成するとされています。梅雨明け直後のフルラウンドは避けます。
ゴルフは何歳までできるかの記事でも触れているように、「今日はやめる」「ハーフで上がる」と決められることは、長く続けるための体づくりの一部といえます。
回復後の注意と、同伴者・キャディへの伝え方
日陰で休んで楽になっても、その日のプレーに戻るのはおすすめしません。環境省のマニュアルは、体調が回復して食事や水分摂取が十分にできるまでは暑いところでの活動を控えるべきとしています。体調が戻らないうちに運転しないことも大切です。
同伴者には、スタート前に「具合が悪くなったら遠慮なく言いましょう」と全員で確認しておくのがおすすめです。プレー中は、会話が減った、返事が遅い、足取りがふらつく、といった変化を互いに見ておきます。キャディ付きなら「無理そうなら止めてください」と最初に伝えておくと、声かけや休憩の提案をしてもらいやすくなります。環境省のマニュアルも、高齢者については「本人に任せず周りの人が気にかけてサポート」することを求めています。
受診の目安と、持病がある方へ
消防庁のリーフレットでは、涼しい場所で休み、水分と塩分をとっても頭痛・吐き気・だるさなどが改善しないときは医療機関の受診が必要とされています。翌日以降もだるさや食欲のなさが続く場合も、早めに医療機関に相談してください。また、高血圧・心臓病・糖尿病・腎臓病などの持病がある方や薬を服用している方は、夏のゴルフでの水分や塩分の取り方を事前に主治医に相談してください。
まとめ
- 熱中症はI度(めまい・立ちくらみ・こむら返り)、II度(頭痛・吐き気・だるさ)、III度(意識障害・けいれん・体が熱い)の3段階。判断の軸は「意識・自分で飲める・改善する」の3点。
- 応急処置は「涼しい日陰へ、衣服をゆるめる、首・脇の下・太もものつけねを冷やす、飲めるなら水分と塩分」。
- 呼びかけに応えない、自分で飲めない、休んでも良くならない、けいれん、体が熱いなら救急車。119番とマスター室への連絡を同時に。
- 搬送者の57.1%が65歳以上。暑さ指数31以上は激しい運動中止、35以上は運動原則中止。予防は前日の睡眠と飲酒、のどが渇く前の水分と塩分、早朝・ハーフ・カートの計画から。
60代・70代のゴルフとの付き合い方の全体像は、シニアゴルファー入門の記事もあわせてご覧ください。
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この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。痛みや体調不良が続く場合、持病がある場合は、医師など専門家にご相談ください。
参考文献・出典
- 総務省消防庁「熱中症対策リーフレット」(熱中症の分類と対処方法・応急手当)
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」第2章 熱中症を疑ったときの対応(現場での応急処置)
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」第2章 どんな症状があるのか(重症度判断のポイント)
- 総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」第3章 運動・スポーツ活動時の注意事項(熱中症予防運動指針)
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」第3章 高齢者と子どもの注意事項
- 環境省熱中症予防情報サイト「熱中症特別警戒情報とは」(熱中症警戒アラート・特別警戒アラートの発表基準)
